税理士試験を受験している方なら、大学院に通って論文を書き税法免除をうけることを一度は検討したことがあるのではないでしょうか。
実際に通ってみて、「これは実務経験ないとなかなか辛いぞ」と感じたので感想を書いてみます。
履修科目
2年通う中で、私が履修した科目は下記の通り。
- 企業法研究(会社法)
- 民法研究
- 憲法研究
- 租税法基礎研究(判例の触れ方など、法律学の一般的な考え方を学ぶ)
- 租税法研究(個別税法に共通した考え等を学ぶ)
- 法人税法研究
- 所得税法研究
- 資産税法研究(主に相続税法)
- 消費税法研究
- 組織再編税制研究(法人税法の一部である組織再編関連について学ぶ)
- 国際租税法研究(タックスヘイブンほか、日本と諸外国の税制の関連について学ぶ)
- 租税法研究演習(いわゆるゼミ。2年かけて論文を書き上げる)
半年で終わる授業もあれば、通年続く授業もありました。
基本的には租税法研究演習(ゼミ)以外は1年次で単位を取り2年次は論文に集中する、という形をとる人がほとんどです。
とにかく忙しい
授業は、月曜・水曜・金曜は18時から21時10分まで。
土曜日は9時30分から16時30分まで。
各授業、次の授業や土曜の授業は翌月曜までに、課題の提出を課されることがほとんどです。
私は仕事をしながら大学院に通っていたので、
平日は9時から17時まで仕事をし、家までの帰り道までにスーパーに寄り食材を買い、
家で18時から始まるリモート授業を受けて、
(新型コロナウィルス騒動全盛期だったのでほぼ全ての授業がリモート授業でした。)
授業が終わったら食事して課題をこなす、という流れでした。
日曜は仕事も授業もありませんでしたが、ゼミの課題である論文に向けての準備のため、
図書館に通ったり、学者の方々の論文を読み込んだりしていました。
授業は、税制を知っている前提で進む
上記履修科目をご覧いただいたように、授業は税理士に求められる知識を網羅しています。
しかも、ほとんどの授業が「知っていて当たり前」のように進んでいきます。
制度そのものを解説してくれる授業ではなく、制度設計の考え方や設立経緯など学ぶ授業となっています。
「え、何それ初めて聞いた」というようなことがあると、授業も全く理解ができないまま進み、
授業に伴って課される課題もこなせず、という事になります。
それでいて、初めて聞いた知識を勉強しようにも忙しくて時間が取れない、
という悪循環に陥ります。
実際に授業についていけず、せっかく安くはないお金を出して入学した大学院なのに、
ドロップアウトして来られなくなったり、論文が書き上げられず留年する人もいました。
いましたと書きましたが、同時期に入学した院生の3分の1から半分くらいは、
一緒に卒業できなかったのではないでしょうか。
あんまり友達いなかったんでよく知らないですけど。
大学院に通って恩恵を受けられる人はどんな人か
大学院に通う税理士受験生の多くは、簿記論・財務諸表論を合格して税法1科目合格したかする前か、という人が多いと思います。
私は、大学院の授業については、「実務や予備校テキスト等、どこかで触れたことがある知識」を補完したり深く学んだりできる点がとても優れていると思います。
科目合格しているかどうかはあまり関係がなく、税法が好きな人が税法についてとことん突き詰めて考えるにはうってつけの環境だと思います。
税法について考えることが好きな人が集まりますので、話も楽しいですし。
もちろん、論文を書き上げて税法免除が得られるというのが最大の恩恵かと思いますが、
必ず税法免除が得られる、というのは実は不明だったりします。
税法免除には一定の要件があり、要件を満たしていない論文は税法免除が得られないので、書いた論文によります。
大抵の大学院は、きちんと指導できる教授がいると思いますが。
どこかで触れていれば、なんとなく理解できるし知識がつながる
大学院に通うのに、「私はそんなに税法に詳しくないし、授業についていけるか不安だ」
という方もいらっしゃると思います。
もし、大学卒業したてで実務に触れたことがなく、税法の勉強をしたことがない方は厳しいかもしれません。
逆に言うと、実務で税法に触れているならば、
体系的に勉強したことがなくても、穴が開いている知識を埋めることもでき、
あいまいだった理解が深まるという効果があるというのは、自身の経験からも言えます。
社会人になってから大学院に通うのも大変かと思いますが、
私は法学部出身ではなく農学部出身だったので、法律学とはどのように勉強するのかをきっちり学べましたし、
5科目合格で5科目しか知らないという状態よりは、ある程度網羅的に勉強できたのはよかったかな、と思います。
決して安くはない金額と時間を投下する、決断するにはなかなか難しい問題ではあります。
この記事が決断の参考になれば幸いです。
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