経営セーフティ共済(以下、セーフティ共済という。)とは、独立行政法人中小企業基盤整備機構(通称:中小機構)が取り扱っている制度です。
毎月掛金を払込むことで、さまざまなメリットが享受できます。
うまく利用すると、節税しながら資金繰りを安定させることができます。
セーフティ共済の概要
- 毎月5,000円~200,000円まで掛金を払込むことで加入できる
- 掛金は全額支出時の経費となる
- 一定期間経過後に解約すると、掛金が全額返金される(利息は付かない)
- 返金された掛金は、返金された時の収入となる
- 取引先が倒産した際に、無担保無保証人で掛金に応じた借入ができる
セーフティ共済を利用した節税方法
利益が出過ぎた時に、経費にする
事業が好調でその年度の決算の利益が出そうな見込である場合に、セーフティ共済掛金を年払いで払込みます。
利益が出そうな決算の年度中の払込みであれば、払込んだ年度の経費になります。
最大12か月分の前納が可能です。
あらかじめ加入しており毎月払込みで11か月分払込みしておいて、12か月目の払込み時に12か月分の前納手続きをすると、
その年度は最大23か月分の掛金を払うことも可能です。
こうすることで、黒字幅が小さくなり納める税金が減ります。
赤字の時に解約し、収入にして赤字幅を小さくする
払込みを40か月続けた後に解約すると、全額返金されます。
(12か月以内の手続きは返金なし。13か月~39か月以内の手続きは掛金の80%と目減りします)
返金された掛金は、返金時の収入になります。
赤字で苦しい年度に返金手続きをすると、赤字が縮小し資金繰りも楽になります。
赤字なので税金を納める額も法人ならば法人県民税と法人市民税の均等割のみ、個人では0円になります。
セーフティ共済利用時の注意点
いい事ばかりのように見えますが、注意が必要な点もあります。
ずっと黒字続きだと、節税効果がない
払込んだ時は経費ですが、返金を受けた時に収入になります。
返金を受けたときに、返金を受けた金額以上に赤字があった場合には節税になりますが、
ずっと黒字続きの会社だと、返金を受けた時に収入になり返金を受けた金額にも税金が課され、
単に納税時期が延びただけになります。
法人税率が今後上がった場合には、上がった率で計算されるので余分に納税することになります。
個人の場合は累進課税のため、節税額より大幅に多額の納税が発生する可能性があります。
資金繰りが悪化する
掛金を外部に払込むということは、会社から資金が出ていくことになります。
その分資金繰りが悪化することになります。
節税できるといっても利益に乗じる税率分だけです。
法人ならば払込み額の約22%しか納税額が減りません。
仮に460万円払込んでも約100万円分しか納税額が減りません。
460万円の資金が外部に払込まれ自由に使えないとなると、なかなか苦しいものがあるのではないでしょうか。
早期解約は、掛金が目減りする
12か月以内の解約手続きは返金なし。
13か月~39か月以内の解約手続きは掛金の80%が返金されます。
申し込み手続きしたものの、資金繰りが悪化したので解約したいと思っても、
少なくとも13か月経たないと返金がありません。
条件を満たさないと、借入ができない
上記概要で、掛金に応じた借入ができると書きましたが、
借入をするためには条件があります。
詳細な条件は、こちらをご覧下さい。
(個人のみ)事業所得以外では経費にならない
セーフティ共済は、事業所得の経費としては認められますが、事業所得以外の所得の経費としては認められないことになっています。
注意事項
個人事業の場合、事業所得以外の収入(不動産所得等)には、掛金の必要経費としての算入が認められませんのでご注意ください。
中小機構-掛金について
したがって、掛金を払い込むことは可能ですが、メリットとしては取引先倒産時の借入が行えるのみとなります。
上手に使えば、うまくメリットが享受できる
もともとは節税のための制度というよりも、取引先が倒産した際の資金繰りが困らないように導入された制度ですので、
節税に生かすとなると、利益額や資金繰りをうまく調整する必要があります。
利益の調整となると、あえて売上をあげないように取引を調整するなど、現実的ではないことになります。
(売上除外や架空経費計上は脱税ですので、絶対にしてはならないことです。)
しかしながら、掛金を留保しておけるほど資金が潤沢で、いざの時のための外部積立金として置いておいてもよいということであれば利用してもよいかもしれません。
個別の詳しい利用方法についてのご相談をご希望の方は、問い合わせフォームよりお問い合わせください。