自己所有賃貸用建物の修繕のために見積計上する修繕費は経費になるか→税金の計算上経費になりません

原因発生前。

不動産賃貸業を営む個人事業主の方から質問を受けました。

「数年ごとに行う外壁修繕工事に係る経費をならして計上できるか」

賃貸用アパートがぼろぼろになってきているので、数年後に外壁の塗りなおしと屋根の防水工事を行う予定である。
見積もりを取ったところ少なくとも300万円は必要であることがわかった。

一時に経費計上すると赤字になってしまうので、実際には工事をしていないが、
今後数年にわたり按分して経費計上したいが、可能か。

目次

引当金は1種類を除き、税金計算上経費として認められていない

将来発生する出費をあらかじめ費用として見積もり、計上する金額を「引当金」と言います。
会計上、主な引当金は次のとおりです。

  • 貸倒引当金
  • 修繕引当金
  • 賞与引当金
  • 退職給付引当金
  • 売上割戻引当金

会計上の仕訳は、

〇〇引当金繰入(費用) ×××円 / 〇〇引当金(負債) ×××円

というように、任意で決めた金額を計上することができます。

しかし税金の計算上は、貸倒引当金を除き「経費ではないものを計上した」という扱いになり、
利益を計算し直して税額が確定します。
(貸倒引当金は上限額が定められており、上限を超えた金額が経費ではないという扱いになります。)

税法上の経費は「債務確定主義」により計上が認められる

税金の計算において経費と認められるには、「債務確定主義」により計上されたものに限ります。
(減価償却費など、別途税法で定められているものは見積計上でも認められますが、今回の説明では省きます。)

債務確定主義とは、次の3つの考え方です。
具体例として、さきほどの外壁修繕工事の場合を考えてみましょう。

1:事業年度末(または暦年末)までに債務が成立していること

債務が成立しているとは、契約が完了しているという状態を指します。
外壁修繕工事の場合、施工業者に正式に発注し契約書を交わした段階です。
(契約書を交わさず口頭でも契約は締結できますが、実務において工事契約書を交わさない取引を見たことがありません。)

施工業者は契約に基づき外壁修繕工事を行い、施主は工事代金を支払う義務を負います。
この「工事代金を支払う義務」が債務となります。

2:事業年度末(または暦年末)までにその債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること

「債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること」とは、
サービスの提供を受け、サービスが完了している状態を指します。
施工業者により外壁修繕工事が完了し、施主に引渡しを行った段階です。

工事が完了せず年をまたぎ、翌年に完了し引渡しをした場合は、
年度末までに具体的給付原因事実が発生していないため、経費計上ができないことになります。

3:事業年度末(または暦年末)までに金額が合理的に算定できること

契約書や領収書により金額が客観的にわかる状態でなければ経費計上額が定まりませんので、
経費計上できないことになります。
また、不正に作成した契約書や領収書で経費計上したとしても、不正部分は経費になりません。

見積計上する修繕費は、債務確定していないため経費にならない

冒頭の質問に当てはめてみると、

  • 実際には工事契約をしておらず
  • 工事も行われていないので、具体的にサービスを受けたわけではなく
  • 金額も見積金額であり確定した金額ではない

ということになりますので、ならして費用計上したとしても、税金の計算上は経費として認められません。

補足:修繕積立金の扱いについて

修繕引当金に似たような名前のものに、修繕積立金があります。
分譲マンションを購入すると、そのマンションの入居者全員に対し課される積立金です。
分譲マンションを購入し賃貸に出す場合は、所有者が支出することが多いようです。

分譲マンションを賃貸に出した場合、家賃収入は収入となりますが、
支出した修繕積立金は経費になるのでしょうか。

結論は、次の条件の全てを満たした場合に税法上の経費になります。

  • 所有者は管理組合に対して修繕積立金の支払義務を負う
  • 管理組合は修繕積立金の返済義務を負わない
  • 修繕積立金が将来の修繕等のみに使用され、他に流用されない
  • 金額が長期修繕計画に基づき各所有者の持分に応じて合理的な方法により算出されている

支払側(所有者)にとっては、ほぼ債務確定主義に則って支払いが生じる状態にあります。
したがって、経費として認められることになります。
(出典:国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/04/12.htm

ご不明点・ご相談などあれば、問い合わせページよりお問い合わせください。

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1979年(昭和54年)9月23日生まれ
大阪府茨木市出身
大学進学で神奈川県・東京都に移住。
結婚を機に愛知県に移住。
塾講師・PC販売員・塾教室長を経て会計業界へ。
2023年1月、税理士登録し独立開業。

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